fragments of Tuah – トゥアの片影
海を臨むマラッカ王国が栄えた15世紀、
存在していたかもしれないとされる伝説の戦士「ハントゥア」にまつわる
詩的で思弁的なビデオ・エッセイ。
舞台はマレーシア。 主人公は伝説の戦士「ハントゥア」と、クアラルンプールに暮らすミュージシャンである「語り手=わたし」。マレーシアを代表する現代アーティスト、マーク・テたちが、何百年も語り継がれる英雄の痕跡を探し歩き、本や博物館、テレビや映画、街頭や墓場、沖縄にあると言われる実在の痕跡まで追い製作したビデオ・エッセイ。600年以上かけて「マレーシア人」の誇りとして人々に編み込まれた「ハントゥア」の各地・各時代に散らばった物語を再編集し、現代のマレーシアを生きる「わたし」の問いが描き出される。
“ . . . そのため私はどこにいても彼を探す
探すからこそどこにでもいるのだ
でも私が探しているのは脆さ
. . . 失われたものを探す
ハントゥアを探す
私が探しているのは人間らしさ
私が探しているのは彼の人間らしさ ”
Official Teaser
BACKGROUND
マーク・テの代表作のひとつである、1955年のマラヤ戦争終結に向けた和平交渉の失敗と世界冷戦の重要な瞬間を描いた作品『Baling (バリン)』が、世界10都市で上演されてから7年。
今回新たにマークと協働者ファイク・シャズワン・クヒリ、シャムスル・アズハー、ウォン・テイ・シィが注目した人物は、マレーシアに育つ人なら誰もが知っている人物「ハントゥア」。
マークは2018年に共同キュレーターを務めた展覧会『呼吸する地図たち』(山口情報芸術センターにて開催) で日本各地でのリサーチを行い、沖縄の島々に興味を抱くようになった。
その後、神里雄大との《南方から「歴史」を読み換えるリサーチコラボレーション》として琉球諸島でリサーチを実施し、創作を開始。沖縄でマレーシアの ”伝説の英雄” ハントゥアの実在の証拠とされる「短剣」が発掘されたことから、本作の構想は始まった。
通りやショッピングセンターの名前、教科書から映画など、マレーシア全土に様々なかたちで生き続ける「ハントゥア」。 彼の存在あるいは欠如は、マレー圏やマレーシアの文化、アイデンティティ、想像力をどのように形づくっているのだろうか。
ハントゥアは実在したのか?それともフィクションなのだろうか?
様々な断片を通して ”英雄” の姿と謎を解明する最新ビデオ・エッセイ、いよいよ公開。
SCREENING & ARTISTS TALK
『fragments of Tuah – トゥアの片影』公開記念上映&トークイベント 開催!
3月27日(日)15:30〜18:00(予定)
会場:CAPSULE
トークイベントには、映像製作チームからマーク・テ、マレーシアの独立放送局「BFM」のデジタル・プロデューサーのファイク・シャズワン・クヒリがマレーシアからオンライン参加し、ゲストには、展覧会「呼吸する地図たち」(2018年〜2020年)にてマーク・テと共同キュレーションを行ったインディペンデント・キュレーターの井高久美子さんをお迎えします。
マレーシアの “伝説の戦士” ハン・トゥアを題材とした本作品について、コロナ禍で行ったリサーチや撮影などの映像製作秘話や、来場者からの質疑応答も交えて話します。
詳細・申し込みはこちら:https://peatix.com/event/3198851/view
日時:2022年3月27日(日)15:30〜18:00(予定/途中休憩あり)
開催形式:作品上映・トークライブ(限定10名)
上映時間:約47分
言語:英語音声
字幕:バリアフリー日本語字幕
参加費:1,300円(税込・事前決済のみ)*映像視聴リンク付き(後日配布)
申し込み方法:peatix
受付開始:2022年3月20日(日) 12:00
[トーク 登壇者]
アーティスト:マーク・テ、ファイク・シャズワン・クヒリ(*マレーシアよりオンライン参加)
ゲストスピーカー:井高久美子
モデレーター:中村茜
※日英通訳あり
VIDEO ESSAY
THEATRE for ALL とvimeo にて、2022年3月24日配信開始!
*有料配信となります。
*視聴の際は、ヘッドホンの使用をおすすめします。
*THEATRE for ALL での視聴には会員登録が必要です。
Who is "Hang Tuah"?
ハントゥアの歴史的存在については、多くの疑問と論争が残っている。
マラッカ王国の黄金期である15世紀に「活躍した」とされる人物で、マレーシアの国家的アイコンとして今も重要視される。一般的には、スルタン (国王) への忠誠心が強い戦士や、マラッカのラクサマナ (提督) として世界各国を訪問した外交官など、マレーシアの歴史や政治に深く関わる伝説的な人物として表現されることが多い。
Research Collaboration
《南方から「歴史」を読み換えるリサーチコラボレーション》
移動し越境する人々をテーマにした作品を発表する作家・舞台演出家の神里雄大と、マレーシアの政治史を長きにわたり調査している演出家・研究者・キュレーターのマーク・テの、リサーチ・コラボレーションプロジェクト。
2018年7月にインドネシア・ジョグジャカルタにて開催された「Jejak-旅 Tabi Exchange」でのプレゼンテーションをきっかけに、全く異なる手法でリサーチを行う神里とマークによるリサーチコラボレーションが発足。
2019年、国境の「端っこ」を中心に置き換えて考察し、中央と周辺、支配と被支配、というテーマでプロジェクトがスタート。 2019年12月から2020年2月にかけて、琉球諸島(奄美大島、徳之島、沖縄本島、宮古島など)でリサーチを実施。 その後もタイや「Jejak-旅 Exchange 2020」プログラム等で神里・マークは緩やかな対話を続け、それぞれに新作の構想を練り、創作を開始した。
1年目のリサーチを経て、2年目となる2020年、神里は音声作品『カオカオクラブ.mp3』、テキスト作品『カオカオクラブ.pdf』、映像作品『カオカオクラブ.mp4』の三作からなる「カオカオクラブ・オンライン」を発表。
そして最終年となる今回、マークは本作『fragments of Tuah – トゥアの片影』を発表する。
ARTIST
ファイク・シャズワン・クヒリ
ファイク・シャズワン・クヒリは、マレーシアの独立放送局「BFM」のデジタル・プロデューサー。《Something I Wrote》《2-minute solos – art meets politics》《Baling》《Version 2020》《A Notional History》《Oppy & Professor Communitas》などファイブ・アーツ・センターの数多くのプロジェクトや、ダンス・アーティストのリー・レンシンの《B.E.D.》シリーズに出演。バンド「Terrer」でオリジナル楽曲を製作している。
マーク・テ
マーク・テは、マレーシア、クアラルンプールを拠点とする演出家・研究者・キュレーター。多様な共同プロジェクトは、ドキュメンタリー的または思弁的な形式をとることが多く、歴史におけるもつれた関係や記憶、カウンターマッピングといったテーマを扱う。パフォーマンスを活動の中心としているが、展覧会や教育、社会活動、キュレーション、執筆なども行う。ロンドン大学ゴールドスミス校で芸術・政治学修士課程修了。ファイブ・アーツ・センターのメンバー。
シャムスル・アズハー
シャムスル・アズハーは、テクノロジーをパフォーマンス的要素として作品に取り入れながら、演劇・映画・現代美術の領域でマルチメディアおよび照明デザイナーとして活動している。様々な場所や空間をデザインし、ファイブ・アーツ・センターとは多数のプロジェクトで協働してきた。パフォーマンスや展覧会にむけて作品を制作するアーティストのための緩やかで領域横断的なコレクティブ「sans」のメンバー。ディーキン大学 (オーストラリア) の映画・デジタルメディア学部を卒業。
ウォン・テイ・シィ
ウォン・テイ・シィは、現代美術・演劇・映画の分野で1999年から活動。受賞歴を誇るプロダクションデザイナー、キュレーター、プロデューサー、ファシリテーターとして、これまで様々なアート・コレクティブや組織、制作会社と協働した経験を持つ。集団の創造性や領域横断的なコラボレーションの力を信じ、特に芸術と社会環境が交差する点に関心を寄せる。ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズでビジュアルアーツの学位を取得。
CREDIT
映像製作:ファイク・シャズワン・クヒリ、マーク・テ、シャムスル・アズハー、ウォン・テイ・シィ
撮影 (沖縄) :神里雄大、鳥井由美子
英日翻訳:田村かのこ、春川ゆうき (Art Translators Collective)
バリアフリー日本語字幕監修:NPO法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク
バリアフリー日本語字幕映像編集:内田圭
共同リサーチ (2019年度) :神里雄大
統括プロデューサー:中村茜
プロデューサー:黄木多美子、水野恵美
コーディネーター:野崎美樹
プロジェクトマネージャー:佐藤瞳、平岡久美
企画制作:株式会社precog
主催:一般社団法人P
助成:
(国際プロジェクト支援2019-2021:南方から「歴史」を読み換えるリサーチコラボレーション)
芸術文化振興基金
協力:
沖縄県立埋蔵文化財センター
Jejak-旅 Tabi Exchange