投稿日:2025/02/28
本記事は、2024年度に立ち上がった、「GOOD DIALOGUE LABORATORY(略称:GDL)」のイベントレポートです。GDLは、「よき対話を通じて、表現の可能性をひらく」を合言葉に、障害のある人もない人も、さまざまなバックグラウンドをもつ作り手や企画者が集い、表現、創作の環境におけるバリア(社会的障壁)や課題を共有し、議論し、言語化。10年先、20年先の表現の未来をつくっていくことにつなげてゆきたいという想いで立ち上がったネットワークです。
今回は、第3回のオンラインのトークイベントとして企画された「クロストークvol.3 音とはなにか」の様子を、林編集部員の文章でお届けします。
トーク概要
「音とはなにか」インクルーシブな作品制作の視点を学ぶクロストーク(第3回)
日時:2024年 9月18日(水) 19:30〜 21:00
会場:オンライン(THEATRE for ALL 公式YouTube)
登壇:木下知威、細井美裕、関場理生
参加費:無料
アクセシビリティ: 手話通訳、文字支援
はじめに
はじめまして。GDL編集部の林です。株式会社precogにて、子供向けワークショップや障害のある人もない人もともに楽しめるワークショップなどのラーニングプログラムやバリアフリー制作の進行を担当してきました。どんな人でも当たり前に創作・発表・鑑賞が選択肢にあると思える環境を作りたいと思い、GDLを立ち上げました。
GDLのクロストークでは、アーティスト同士の対話の場を広く開いていくことで、表現、創作の環境におけるバリア(社会的障壁)や課題、また、表現に秘めているまだ見ぬ可能性をより多くの方と共有し考えるプログラムです。
今回は、歴史家の木下知威さん・サウンドアーティストの細井美裕さん・俳優・劇作家、ダイアログ・イン・ザ・ダーク アテンドをされております関場理生さんに登壇いただいた第3回「音とはなにか」について、お話していきたいと思います。
「GDL編集部」とは?
さまざまな分野のアーティスト、ファシリテーター、制作経験者でチームを結成。学びを可視化していくコアメンバーとして、また、クロストーク及び研究会の主要メンバーとして企画を行います。
対話の内容について
第3回「音とはなにか」では、登壇者それぞれの音の捉え方・向き合い方について考える時間になりました。
細井さんの「私の代表的な作品でいうと、言葉を使っていないっていう音でできています」というお話からから、木下さん・細井さんそれぞれが”声”をどう聴いているか、という話題や木下さんの「僕はろう者なので音が聞こえないけれど、どんなシステムで音が鳴っているのかを知ることで想像膨らませたりする」というお話から、細井さんが作られている作品の機器をどう捉えて設計していっているのか、という話題についてトークされました。
声をどう聞いているのか?
今回のトークで印象に残っている対話は、登壇者それぞれが声をどう聴いているのかという場面です。
細井さんが「言葉を使っていない音で作品を作っている」というお話をされました。それは、細井さん自身が学生時代に合唱部の活動の中で、合唱での声は匿名性が高くみんなの声が馴染んで1つの音楽になっていくと感じていたことから”匿名性のある声”に着目して作品制作をしているそうです。そのお話の流れで、全盲である関場さんから「声で誰なのかの判別はしてるけれど、カクテルパーティ効果のようなその人の声だけが聞こえているかと言うとそうではなく、割と色んな音はある状態で人と会話している」という話があり、意外とカクテルパーティ効果というのは視覚的な情報も相まって1つの音に集中して他の音を遮断するという現象が起きているのかもと新たな発見がありました。
また、ろう者である木下さんからは「小説などを読んでいる時に登場人物の声を身近にいる人の体格などを思い出してその人に当てはめたりしながら読んでいる」というお話があり、それぞれの身体でどう音を捉えているのかがそれぞれの立場から見えてくる良い対話となりました。
まとめ
今回の対話は「音とは何か」と題し、かなり広義的な問いを投げかけてしまいましたが、細井さん・関場さん・木下さんそれぞれの身体でどう音を感じているのかというのが見えてきた対話となりました。
対話をしながら、私自身もどうやって音を聴いているのかを改めて考える機会になりました。
私は割とテンポや抑揚が気になる人なんだなあと気づきました。だから私は間が怖いのかも…。
どんな風に音を聴いているのか?を改めて考え、皆さんにとっても音の可能性が新たに広がっていく機会になると嬉しいです。