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見える人・見えない人・見えづらい人がともに写真展を楽しむ 浅間国際フォトフェスティバル モニターツアーレポート

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投稿日:2026/02/04

浅間山麓の地域を舞台に、2018年から開催されている「浅間国際フォトフェスティバル」。長野県御代田町にある文化複合施設MMoPをメイン会場として、世界に向けて写真文化を発信してきた国際的な写真フェスティバルである。

公式WEBページ(外部サイト)

本レポートで紹介するモニターツアーは、2024年9月21日に同フェスティバルの企画のひとつとして実施された。次年度以降、フェスティバルのスタッフ自身が、視覚に障害のある人と写真鑑賞を行うプログラムを企画・実施できるようになることを目的とし、株式会社precogが企画・コーディネートを担当した。単なる鑑賞イベントではなく、スタッフ研修を軸に据えた実践的な試みとして位置づけられている。

事前研修

ツアー当日の午前中には、スタッフ向けの事前研修を実施した。講師を務めたのは、視覚障害当事者で、様々な対話型鑑賞や芸術文化コンテンツの制作にも関わる藤本昌宏さんである。

合理的配慮の基本的な考え方や、展示鑑賞におけるサポートについて確認した後、研修はより具体的な内容へと進んでいった。視覚障害のある人への接客の際に大切な声のかけ方や距離感、説明の仕方など、現場で役立つポイントが共有された。

また、藤本さんが普段使っているデバイスも紹介してもらった。
白杖は木製で壊れやすく、必ず予備を持ち歩いていること。足に装着すると振動で進行方向を知らせてくれるナビゲーションデバイス「Ashirase」。そして、点字ディスプレイを備えた情報端末「BrailleSense」。実際に携帯電話の音声読み上げ機能を使い、藤本さんが検索を行う様子なども見せてもらった。

後半は、スタッフのみで移動サポートと手引きの練習を実施した。白杖を使う人をどの位置で、どのように誘導するのか、段差や曲がり角をどのように伝えるのかを、身体を動かしながら確認した。午後のモニターツアーに向けて、経路や鑑賞の進め方についても共有し、準備を整えた。

モニターツアー

午後のモニターツアーには、藤本さんに加え、視覚障害のあるモニターさん、そしてスタッフ6名が参加した。各作品の前で立ち止まり、見えている人がそれぞれ、今視覚的に捉えている作品の特徴について順番に話していき、藤本さんがそれに対して随時質問を重ねていくという形式で進められた。

最初に立ち止まったのは、会場入り口に展示された
マレン・ジェレフ/クラウス・ピヒラー《Too close to notice》。

花壇の中に、高さ1メートルほどのパネルが複数設置されている。参加者全員で作品の周りにあつまり、見えている人がそれぞれの言葉で作品を説明していった。

「花びらの上にもふもふしたものがある」
「色はきれいだけど、少し不穏な感じもする」

藤本さんが問いかける。
「大きさや質感だけでなく、皆さんがどんな印象を持ったかも教えてください」

「かわいい」
「ちょっと、グロテスクかも」
「グロテスク?」
「かびた食パンみたい」
「それ、それ」

この作品は、オランダの病院で起きた真菌感染症の集団発症事件を取材したものだ。原因となったカビ菌は、病院の庭の花壇に植えられていたチューリップから発見された。美しい花の背後に潜む、目に見えない脅威を、写真家と研究者の協働によって可視化した作品である。

一つの作品につき20分ほど立ち止まりながら、屋内外の展示を巡った。各展示にはキャプションが用意されている。キャプションを見る前に参加者同士で印象をシェアしたり、先にキャプションを読み上げてから対話鑑賞を始めたりと、さまざまなやり方を試した。フォトフェスティバルのスタッフが作家の背景や制作手法について解説してくれたことで、鑑賞はより深まっていった。急がず、言葉を重ねながら鑑賞を続けた。

言葉にすることで、鑑賞はひらかれる

御代田の自然と一体化する巨大な構造物、地面から生えているような小さな作品、風に揺れる半透明の布、トンネル状の展示、鉄骨の構造体に貼られた巨大な写真。ここでは、額縁に収まった「写真」だけが展示されているわけではない。

抽象的なテーマや社会的課題を扱う作品も多く、参加者は巨視的な視点とミクロな視点を行き来しながら、光や音を含めて鑑賞していった。

モニターとして群馬から参加してくださった櫻井さん親子。息子さんの貴磨さんは弱視で、重複障害がある。

 「写真って何だろう?とわからなくなって、考えさせられた」
「普段、アート作品を見ることはなかなかない。わからないけれど面白かった。最初からわからなくて、どうしようかと思ったけれど……」

櫻井さんが特に印象に残ったのは、小さな物体や生き物をカメラ内部に挿入しながら撮影した、スティーブン・ギルの作品だったそうだ。

写真とは何かを揺さぶられる体験

最後に鑑賞したのは、
ザ・コピー・トラベラーズ《Traveling Octagon》。

テーブルの上の球体《イメージボール》には、作家たちが世界各地で集めた素材がコラージュされている。今回は特別に触れてよい許可を得て、参加者全員で円になり、手触りを確かめながら鑑賞した。

 

最後に、展示テーマについてのキャプションをスタッフの米田さんに読み上げてもらい、このツアーは終了した。

展示テーマについて

「Unseen Worlds まだ見ぬ世界へ」について

カメラは、その誕生以来、私たちの目では捉えきれない瞬間や現象を可視化する装置として進化してきました。

光と影の中に潜む瞬間、時間の痕跡、感覚や記憶が織りなす世界――

写真はそれらを写し出し、私たちを新たな発見と対話へと誘います。写真は単なる記録の手段にとどまらず、目に見えない現象や時間を可視化し、想像力や精神性を表現する手段として発展し、ものごとの裏に潜むストーリーや、感覚が生み出す非物質的な世界までを描き出します。

アートフォトを通じて、見えるものと見えないものが交錯する瞬間を体験することで、私たちの意識を超えた未知の領域に触れる機会を提供します。

本展覧会では、目に見えるものと見えないものの境界に立ち、多様な視点やアプローチで「まだ見ぬ世界」への扉を開き、カメラが拡大した人間の視覚の可能性の先に、未知なる領域を旅し、私たち自身の世界観、価値観を問い直すきっかけとなることを目指します。

https://asamaphotofes.jp/news/20250423/

ツアー後、櫻井さん親子は「こういうツアーがあれば、またぜひ参加したい」と話してくれた。複数人で感じたことを言葉にし、共有することで、写真への想像は大きく広がる。見える・見えないにかかわらず、「一緒に鑑賞する」という体験そのものが、見える人にも見えない人にも面白い場としてひらかれていく。その可能性を強く感じさせる時間だった。

このモニターツアーは、特別な支援の場というよりも、写真と向き合う方法そのものを問い直す機会にもなった。

 

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