Q インクルーシブな社会に向けて=人が活きること。制度やワークショップ(研修)の持つ役割とは?

人との関わりは、目的意識と関心、ユーモアを大事にしたい

私は、新卒で入社した英会話スクールのBtoC営業で、多くのお客さんの「夢や目標達成の応援・支援をする」ということと、マネージャー、エリアマネージャーという立場で、エリア内研修の設計や、メンバーの目標管理などの人材育成を経験し、「人を活かす」仕事がしたいという想いから現在の人材開発コンサルティング業への転身を選択しました。ユニークで優秀なコンサルタント陣と共に、多くの人や企業の課題解決、組織開発に関わり、コーチング・講演・研修・ワークショップ・プロジェクトなどに立ち会う中で、私自身が人や課題に向き合う時に大事にしていること、したいことを3つ見つけました。

一つ目は目的意識です。課題に向き合う時、どうしても「どうやって/何をする」へ意識が向きがちですが、「何のために/どう嬉しい」に立ち返ることで一気に無駄なものが省かれて、進むべき方向が明瞭になる。そんな場面に何度も遭遇します。

そして二つ目は、相手に寄り添うこと。相手の関心事に関心をもち、想いの背景や考え方・気持ち・立場も理解することでより納得度の高い「やってみたい、出来そう」と思えるオプションを提示したいと考えています。

そして三つ目は、「一笑」、出来ることなら一緒に「爆笑」し、一瞬でも心と身体をほぐすことができたなら、とても嬉しいのです。「楽しいから笑うのでなく、笑っていたら楽しくなる、人は笑うと元気になる」そう信じています。

precogは、私にとっては初めて関わる業界で、未知との遭遇でしたが、THEATRE for ALLの「インクルーシブな社会」へ向けての活動は、「誰もが活き活きできる社会づくり」の一環。3つの事を大事にしながら、個性豊かなメンバーとの協業を楽しみ、異なる視点や経験から、少しでも貢献したいと考えています。

昨年(2024年)7月に開催した「障害者雇用における課題共有のワークショップ」の実施に際し、事前の企業や作業所訪問ヒアリング、企画検討、当日運営に参画しました。初めてのテーマに触れ、参加者や企画運営メンバーからも、たくさんの学びがありました。

「障害者雇用における課題共有のワークショップ」のチラシ

ルールや制度はなぜ必要か

個人的には「合理的配慮」や「ハラスメント対策」も、お互いが相手の「考え方・気持ち・立場」を理解することを少しでも意識して向き合うことで、法律や具体事例などを知らなくても、大きなトラブルにならず、歩み寄れることも多いのではないかと思うところがあります。

一方で、共通の知識や場がお互いを守ってくれることもあります。制度、研修・ワークショップは、異なる形で組織や個人の成長と成功を支えていると言えます。

制度にはルールやプロセスを提供し、長期的に安定した秩序を保つ役割があると考えています。実際には、どんな制度も設計から定着するまでにある程度の時間と労力を要するものですが、きちんと運用出来れば、一貫性と公平性が確保され、意思決定も容易になります。また、役割に対する行動や成果に責任感が促されるというのも重要なポイントだと感じています。

研修、ワークショップは個々のスキルや知識の向上、チームワークの強化を促進し、生産性を高める場として重要な役割を果たしていると考えます。決まったフレームやステップに沿って思考、議論する事で、漏れなくダブりなく物事が整理されたり、違いや共通点を発見し易くなるというメリットがあります。また、同じテーマで議論をしたり、時間や空間を共有することは、それだけでも親和性を高め、その後の信頼関係を築く好機になります。

制度や研修は人のためにある

そもそも、制度や研修、ワークショップは、人が活き活きするために設計します。

最近は、ゲームや診断ツール、スポーツ、フィールドワークを取り入れたり、お笑い芸人が講師を担当するものなど、様々なスタイルの研修、ワークショップがあります。企画提案、当日運営も益々やりがいがあります。

人が活きる研修やワークショップの実現のために、私が大事にしていることは先ほどあげた3つ(目的意識、相手に寄り添うこと、一笑)に加えて、もうひとつあります。それは、「同じルールや枠組み」の上で、活動してもらうということです。制度やルールは、人を縛るためではなく、多様な人が共同し、チームになり、それぞれ自由であるためにこそ、必要なものだと思います。

執筆者プロフィール

  • 渡辺希美
    アソシエイトマーケター
    1978年、東京生まれ。新卒で大手英会話スクールへ入社し、2008年、同社倒産をきっかけに、人材開発コンサルティング業界へ。業界業種問わず、多様な企業の人事課題の解決に向けて並走中。2024年4月より人事制度改革とTHEATRE for ALL事業部マーケティングサポートメンバーとしてprecogに参画。プライベートではまだまだよく食べ、よく呑み、よく眠る、そして踊る”阿波踊り”。「人」の思考や感情に関心が深く、NLP(神経言語プログラミング)を学び、関わる全ての「人」が「活きる」ための一助でありつづけたい。