投稿日:2024/04/16
幅広いファン層をもつ、ギャグコメディの傑作「パタリロ!」。加藤諒さんが座長・主演をつとめた舞台シリーズ3作目、「霧のロンドンエアポート」。
2.5次元ミュージカルとしても注目される本作は、情報保障が加わったことで、よりたくさんの方に楽しんでいただけるようになった。主演の加藤諒さんと、バリアフリー版の手話制作に関わった緒方れんさん、今井ミカさんをお招きして、本映像の魅力と「パタリロ!」の手話の面白さについて語っていただいた後編をお届け
キャラクターの個性を表すニックネーム的手話「サインネーム」のこと
加藤)キャラクターの名前を表す手話をつくっていただいていたと思うのですが、あれはどうやって?
緒方)サインネームはですね、今回主人公のパタリロは、前髪がくるんっとしている特徴的な髪型からイメージしてつくりました。でも実は、ろう者にとっては漫画のタイトルの『パタリロ!』って、こういう(クックロビン音頭の手をパタリと倒す手話)のがあるんです。でも、今回はキャラクター個人を表すサインがあった方がいいなと思ったので、それとは分けて作ったんです。
※サインネームとは:サインネームとはろう者のコミュニケーションで、特定の人物を簡単な手話で表現するあだ名のようなもの。本舞台の手話制作でも、名前を指文字で表すのではなく特徴的なキャラクターがすぐに手話で伝わるように、サインネームを起用
加藤)すごく面白いです!他のキャラクターのサインネームも、バンコランは美少年ビームなのかな、とか。
緒方)バンコランは、特徴的な目元のイメージから作りましたね!
サインネームは、私もミカさん(今井)も持ってます。
加藤)へー!あだ名みたいなことですかね?
緒方)そうですね。でも、ろうの中でも、簡単に決められるってことでもないんですよ。その人の人となりとか、行動ですとか、性格とか、何かすごい好きなものとか、ていうのをみんなが見ていて決まっていくっていうことが多いんですよ。
今回の舞台のキャラクターのサインネームは、短時間で決めなきゃいけなかったし、わかりやすく皆さんに伝えるというところで、不自然な表現じゃなくて、使いやすい、見やすい、覚えやすい、というところを意識しました。それも楽しかったです。
▼各キャラクターのサインネームはこちらからご覧になれます(YouTube)
今井)私は、両親もろう者なんですけども、高齢世代は、顔とか髪型とか体型とかを模すことが多いんですよね。例えば太ってて、メガネで、パーマでとか体の特徴をとっててのが多かったんですけど。最近の若い人の場合は指文字を使うことが多いんですよね。でも、私たちの周りの仲間は、性格とか、いつもの癖とか、行動とかみたいなのからつくることが多いです。
緒方)今井さんは、こう、いつもポリポリって(顔を掻く動作)してるから、サインネームもその動作だったりね。
加藤さんのサインネームもつくりたいな!
加藤)え!嬉しい!
緒方)今日、今お話ししながら考えて、最後にはプレゼントしますね。
当たり前の日常世界として描く。「パタリロ!」の中で描かれる同性
-「パタリロ!」という現代の舞台で、同性愛のキャラクターが現代に描きなおされているということについて、お感じになったことはありましたか?
緒方)同性愛というテーマが描かれることについて。昔はもう、そんなことは否定されてっていう時代でした。今は時代が少しずつ変わってきていて、まだまだではありますが、皆さんの理解っていうのが少しずつ広がってるのは非常に嬉しいと思います。昔は本当に大変だったんですよね。一人で苦しんで悩んでってことが多かったんですけども、同じ仲間が増えてきて、そしてテレビでも放送されて一般の人の目にする機会が増える。もっともっと発信していけたらいいなって。恥ずかしいことではないと、広まっていってくれたらいいなと思います。
加藤)『パタリロ!』の世界って、BLをBLとして扱わないっていうか、普通に日常的なもの、普通の異性愛者としての恋愛と同じような扱いで描かれていると思うんです。僕たちが生きてる世界で、ただ好きになった相手が同性だったっていうだけだから。そういうことが、『パタリロ!』の物語みたいに、僕たちが生きる世界でも普通に恋愛ができる世界になればいいなって思いますね。
今井)自分自身もろう×LGBTQのダブルマイノリティをテーマに描いた映画などを作っているので、LGBTQの出演が当たり前だってことを発信できるような風にしたいんですけども、やっぱり「LGBTQの映画なんだね」って評価されてしまうことがまだまだ多い。普通に楽しんでみてほしい。
『パタリロ!』は、わざわざLGBTQをテーマにしてますって言ってない。当たり前って感じなんですよね。その世界観にすごく共鳴しました。すごくいいなって、このような作品がもっともっと広まって、舞台も含めてどんどん広まってほしいなって思いました。
ろう者も聴者も楽しめる!手話版『パタリロ!』が舞台鑑賞をひらくきっかけになることを願って
-作品をこれからご覧になる方に、改めまして、今回の手話版・舞台「パタリロ!」〜霧のロンドンエアポート〜の映像配信で、注目して観ていただきたいポイントを教えてください。
緒方)そうですね。ろう者、ろう文化での笑い、聴者の中での笑いのツボのポイントって違うんですけど「パタリロ!」の場合は、動きや手話を加えることで、うまくその橋渡しをしているんです。字幕は日本語なんだけども、日本語とは違う言語としての手話も同時に見てもらえる。それから、言語だけでなく、文化面もうまく取り入れて作っているので、ろう者も聴者も一緒にみて楽しめる作品になったっていうのは間違いないと思います。もう何回も何回も繰り返し見ても飽きないくらい、みなさんにも見て楽しんでいただきたいなって思います。
あとですね、今、バリアフリーを付けた方がいいって取り組みがどんどん広まる中で、耳が聴こえない人たちには、字幕があれば十分じゃないかっていう誤解があります。でも、実際には、字幕の日本語を、第二言語としてみている人は、字幕だけだとついていけなくなってしまうんです。なので、手話を第一言語とする人たちが、自分たちの言語で楽しめる作品っていうのが、この「パタリロ!」をきっかけに広まって、いろんな作品に手話がついていくといいなって思います。外国映画を日本で上映するときに、日本語吹き替えってありますよね。声優さんがいらっしゃいますよね。アニメとか、洋画に声優さんが吹き替えでやってることが多いと思うんですけど、今回私がやったのはそんな感じ。
手話で演じる姿をみてもらう機会自体がまだまだ少ないので、ろう者だけではなく聴者、どんな方が見ても面白いね、素敵だねって思ってもらえたらいいな。
今井)人にもよると思うんですが、作品を鑑賞するとき、私は手話と映像だけ見ます。両親は、手話があれば、手話と映像。字幕を消してみています。あんまり情報が多すぎると混乱して、ノイズになってしまう方もいるんです。育った環境とか、途中で手話を習得したって方の中には、日本語の方が理解しやすい方もいますので、そういう方には、字幕があった方がいいなって人もいます。本当に人によります。逆に手話じゃなくて字幕だけって人もいます。
本当にいろんな方がいるので、一人一人のニーズに合わせて誰もが楽しめるっていうのがいいですよね。映像と字幕と手話とっていうのが一般的になるのがいいかなって思います。
加藤)登場人物一人一人が、すごく個性的で、『パタリロ!』って結構自由度が高い作品なので、セリフを喋ってないところで、みんないろんなことをやっていたり、お祭りみたいな作品なので、気負わずに楽しんでいただけたらいいなって思うし、緒方さんの手話も本当に素晴らしくて、すっごく面白いので(笑)
是非ね、何回も見ていただけたらいいなって思います。『パタリロ!』がまた新作上映ってなったらぜひ、劇場で実際に手話通訳とかでの公演があっても面白いですね。
緒方)今井)ぜひぜひ!
-最後に、加藤さんに緒方さんと今井さんからサインネームのプレゼントが
緒方)こんな感じでどう?笑顔、口元が特徴的だから(加藤諒さんのサインネームを表現)
加藤)口!
緒方)ニコって。いつもニコってされてますよね。口に特徴があるので、こんな風にして。どうですか?
加藤)りょう!へーい!諒でーす!(手話をしながら)
緒方)どうですか、みなさんかわいいですよね?
一同)かわいい!
加藤)事務所オッケーが出ました!(笑)
一同)(笑)