投稿日:2021/02/25
オンライン型劇場「THEATRE for ALL」では、字幕や音声ガイド、手話通訳など、作品へのバリアフリー対応、多言語対応を行っている。「THEATRE for ALL」でのアクセシビリティは、鑑賞者の“サポート”に留まらず、作品をよりクリエイティブに魅せることを目指しているのが特徴だ。ここでは4つの作品をピックアップ。
古典落語を気軽に目と耳で鑑賞できる金原亭世之介&RAGG 落語ミュージカル「お菊の皿」、役割を終えた古い家電を楽器として再生させる、和田永「『エレクトロニコス・ファンタスティコス!』〜本祭I:家電雷鳴篇〜」、多様な心身を持つ人との対話からファッションの可能性を考える「True Colors FASHION ドキュメンタリー映像『対話する衣服』-6組の“当事者”との葛藤-」、映像とアクセビリティの新しい融合に挑戦する異言語Lab.の「没入型映像 イマージュ」と、作品それぞれの面白さもさることながら、各クリエイターたちが創作の延長線上で、新たなアクセシビリティのあり方にチャレンジしていることに注目してほしい。
金原亭世之介&RAGG落語ミュージカル「お菊の皿」
バンド演奏で聴く“落語ミュージカル”、目にも可笑しいアクセシビリティ付き
落語は落語家が一人で語るもの、という概念を吹き飛ばす、落語家の金原亭世之介とバンドメンバーRAGGによる落語ミュージカル。1986年に渋谷エッグマンで初演された本作は、“皿屋敷”の名でも親しまれる古典落語「お菊の皿」を、落語と歌で聴かせるもの。番長皿屋敷の怪談で知られるお菊の幽霊を見ようと、集まってくる見物人たち。やがてお菊の“皿数え”は一種のパフォーマンスとなっていき……。
落語シーンには語りの字幕はもちろん、擬態語にはマンガチックな書体が施されたり、人魂がイラストで現れたりと、映像ならではの楽しみ方に挑戦。ただあらすじを追うのでなく、語りや笑いの豊かさを感じさせてくれる内容となっている。
(映像の種類:バリアフリー日本語字幕 / 英語字幕 / オリジナル映像)
作品データ
■配信開始
2021年2月26日(金)
■料金
1,000円(税込)
■上演時間
57分
Vocal & Storyteller:金原亭世之介
Guitar:中村隆志
Drums:矢口浩
Percussion:栗山豊二
Bass:亀川洋
Keyboards:田辺裕己彦
収録公演:2021年1月14日(木)
スタジオサウンドショット
無観客LIVE
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和田永「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」〜本祭I:家電雷鳴篇〜
古い家電たちが楽器として“再生”、和田永の語りのようなナレーションにも注目
「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」は2015年に活動をスタートさせた、Open Reel Ensembleの和田永とNICOS LABのメンバーによるプロジェクト。ブラウン管テレビや扇風機など、古い家電製品をオリジナル楽器にし、新たな奏法を編み出しながらオーケストラを作っていく。
時代の変遷の中である役割を終え、“死んでいく“家電たち。そこに新たな息吹を吹き込むことで、有機的な空間が生まれる。なお本作には視覚障害者のためのナレーションが付属。演奏に使用されている家電や演奏法について、和田が語りかけるような口調で解説している。
(映像の種類:日本語字幕 / 日本語字幕(かんたん)/ 英語字幕 / 中国語字幕 / スペイン語字幕 / ポルトガル語字幕 /日本語字幕+音声ガイド)
作品データ
■配信開始
2021年2月26日〜
■料金
無料
■上演時間
15分
出演:和田永 / 向井秀徳 / 快快 -FAIFAI- / 木津かおり / 飛鷹全法 / 松崎順一 / 市原えつこ / 東京 Orchest-Lab / 日立 Orchest-Lab / 京都 Orchest-Lab ほか
編集:加藤和也 / 河合宏樹
撮影:河合宏樹 / 森重太陽 / 山倉一樹 / 瀬川功仁
録音・調整:葛西敏彦
主催:ELECTRONICOS FANTASTICOS! 実行委員会(Sony Music Artists Inc. / VINYLSOYUZ LLC / NPO TOPPING EAST)
収録公演:2017年11月5日(日)
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True Colors FASHIONドキュメンタリー映像「対話する衣服」-6組の“当事者”との葛藤-
対話から紡がれるファッションの可能性、異なる心身を持つ6組のデザイナー&モデルの挑戦
山縣良和が主宰するファッションデザインの教室・ここのがっこうの卒業生と在校生から選抜された6人のデザイナーが、さまざまな心と身体を持ったモデルに向き合って作品制作に挑むさまを追ったドキュメンタリー。デザイナーとモデルが対話を重ねる中で、ファッションの意味や可能性を問いつつ、コロナ禍において等しく“当事者”となった私たちの現在に迫る。
なお各作品の撮影をLILY SHUが担当し、音楽家の蓮沼執太が素材の音やモデルたちの語りを収録。ドキュメンタリーの後半ではその写真と音で構成された、映像版写真集のようなシーンが繰り広げられる。(映像の種類:音声ガイド / バリアフリー日本語字幕 / バリアフリー英語字幕 / オリジナル映像)
作品データ
■配信期間
2021年3月5日(金)~(無期限)
※バリアフリー英語字幕は後日公開
■料金
無料
■上演時間
84分
デザイナー×モデル(6組): 斎藤幸樹×カイト、SiThuAung×アオイヤマダ、市川秀樹×大前光市、タキカワサリ×ちびもえこ、田畑大地×葦原海、八木華×須川まきこ
アドバイザー:山縣良和(ここのがっこう)
写真・構成:LILY SHU
音楽:蓮沼執太
監督:河合宏樹
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異言語Lab.「没入型映像 イマージュ」
「私」は誰?映像とアクセビリティの新しい融合に挑戦する異言語Lab.の実験映像コンテンツ
本作は、異言語Lab.が生み出す、実験映像コンテンツ。異言語Lab.は、異なる言語を使用する同士が言語の壁を超えてコミュニケーションするための新たな形を提案するラボラトリー。これまでに手話や筆談、身振り等を謎解きに応用した“異言語脱出ゲーム“や手や身体で相手にイメージを伝え合うコミュニケーションゲーム“SHAPE IT!“、既存の言語を超えた“未来言語“のワークショップなどに取り組んできた。
今回は、その蓄積を基に、環世界にまつわる「私」の視点の提供に挑戦する。とある部屋で日常生活を過ごす私。そんな中、やがて私に変化が生まれていく…。
情報保障が単なる情報保障にとどまらず、新しい融合の形として挑戦している点も見所だ。どのような発見があるのか。ぜひ体験してみては。
作品データ
■配信開始
2021年3月12日(金)
■料金
1,000円(税込)
■上演時間
15分
主催:異言語Lab.
監督:渡辺俊介
音響監督:田中 堅大
プロット協力:野澤 幸男・藤本 昌宏
製作:和田夏実・牧原依里
製作総指揮:和田夏実