『瀕死の白鳥』『瀕死の白鳥 その死の真相』

Dance Base Yokohama

ABOUT

酒井はなによる『瀕死の白鳥』オリジナル版と、岡田利規演出、酒井はなと四家卯大のチェロによる、白鳥が自身の死因を踊りながら語る『瀕死の白鳥 その死の真相』の2つの公演記録映像。

ダンスの歴史にフォーカスをすることでダンスの「継承」と「再構築」の2つの視座からプログラムを構成した企画「ダンスの系譜学」は、神奈川に縁のある3名の女性ダンスアーティストの安藤洋子、酒井はな、中村恩恵が参加し、Dance Base Yokohamaで創作、2021年10月に愛知県芸術劇場にて初演された。

本映像では、日本を代表するバレエダンサーの酒井はな出演の2作品を抜粋。世界中のバレエダンサーに踊り継がれてきたフォーキン原作『瀕死の白鳥』と、酒井はなが演劇作家の岡田利規と取り組んだ新解釈バージョン『瀕死の白鳥 その死の真相』。白鳥の死因に迫ることでバレエの様式を解体し、現代のパフォーミングアーツの新たな局面を切り開く。

公開中

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作品の基本情報

上映時間
28分
言語
日本語
料金
〈レンタル〉 1,000円(税込) 視聴期間: 168時間 / 7日間 この作品はレンタル(PPV)でご視聴いただけます。*Vimeoの仕様上、お客様の閲覧環境によって金額が米ドル表示になる可能性もございます。
ジャンル
演劇 ダンス
シリーズ
TRANSLATION for ALL EPAD × THEATRE for ALL

本作品のアクセシビリティ

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POINT!

白いチュチュとヘッドドレスのバレリーナが、広げた両手を羽ばたかせながらポアントで踊る姿は、あまねく人が「バレエ」を思い浮かべる際の、万国共通のイメージではないだろうか。日本を代表するプリマ・酒井はながこれを踊ることの必然性と説得力が、静謐な美しさとともに、客席の隅々にまでゆき渡る。が、はかなげに死んでゆく白鳥を見届け「バレエを観た!」という満足感と余韻に浸る観客を前に彼女は、あろうことか、サンサーンスのメロディを「♪テーレーレー」と鼻歌のように口ずさみながら、ポアントで再登場。ナチュラルすぎる現代口語で、自分=白鳥の死因について饒舌に語り出す。コントのようなこの展開、劇作家・演出家の岡田利規は、『瀕死の白鳥』を言葉のないドラマとして創り上げた振付家フォーキンとダンサー酒井はな+白鳥の代弁者となって、モノローグを紡いでいる。なぜこの白鳥は死ぬのかという根本的な命題には「環境破壊」とのリアルかつタイムリーな回答を与え、バレエダンサーが白鳥になり切るために心と肉体をコントロールする、その献身と格闘の過程をも言語化して、バレエという芸術の成り立ちを解析してみせるのだ。バレエと演劇の有機的な融合を実現させた、金字塔的作品と言っていいと思う。

伊達なつめレビュー
2021年12月10日(会場:KAAT 神奈川芸術劇場<大スタジオ>)観賞


アーティスト・制作者 からのメッセージ

酒井はなさんが踊る、『瀕死の白鳥』を解体するソロダンス作品、というこのプロダクションにおいてぼくがやったのはたった二つのことだけです。
どちらもごく基本的なことです。ひとつは作品のコンセプトを決めることです。
より具体的には、『瀕死の白鳥』の白鳥は何に因って死んだのか?それを勝手に決めました。オリジナルの『瀕死の白鳥』においては、死の理由は明示されません。そのことが作品に余韻や広がりを生み出しているとぼくは思います。死因を問題にしないことが、死にゆくさまを踊ることが美となるための大きな前提条件となっていると感じます。そこでわれわれのバージョンにおいては死因をはっきり決めつける、それによって余韻を台無しにしてしまうことをめざしました。ぼくがこの作品においてやったもうひとつのことは、このパフォーマンスが備える質を何に依拠したものとするかをはっきりさせるということです。といっても特に斬新な方針を打ち出したわけではありません。むしろきわめてシンプルです。酒井はなさんの心身にバレエというダンスの体系が染み込んでいること、『瀕死の白鳥』という作品が叩き込まれていること。そのことになによりも依拠した作品にするという方針をはっきり定めただけのことです。はなさんにはぼくが書いたテキストをせりふとしてしゃべってもらいます。だらだらした話し言葉のようなテキストです。これをしゃべることによってはなさんの身体は、そのバレエの身体としての高い到達点から否が応でも引きずりおろされます。そのさまをぼくは見たいと思ってこの作品をつくりました。でもどうしてそんなことがしたいのでしょうか?それは、ダンスを現在のわたしたちの社会の中に文脈づけるということにまつわる何かがもしぼくにできるのだとすれば、それはそういうやり方によって、つまり、ダンスが高い到達点から引きずりおろされる〈試練〉にぶつかってもがいているさまそのものを提示することによってではないか……という気がぼくにはなんとなくしているからです。

岡田利規

アーティスト プロフィール

酒井はな

Photo by Tomohide Ikeya

 

舞踊家。クラシック・バレエを畑佐俊明に師事。橘バレエ学校、牧阿佐美バレヱ団を経て、1997年新国立劇場バレエ団設立と同時に移籍、主役を務める。2013年ユニットAltneuとして島地保武との共同創作を本格始動。芸術選奨文部科学大臣賞、橘秋子賞特別賞、舞踊芸術賞など受賞歴多数。2017年紫綬褒章受章。


岡田利規

Photo by Kikuko Usuyama

 

演劇作家、小説家、チェルフィッチュ主宰。横浜出身。『三月の5日間』で第49回岸田國士戯曲賞受賞。小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』で第2回大江健三郎賞受賞。戯曲集『未練の幽霊と怪物 挫波/敦賀』で第72回読売文学賞 戯曲・シナリオ賞受賞。


四家卯大

 

ロック、ポップス、ジャズ、クラシック、即興音楽と多彩なジャンルで活躍する土俗的チェリスト。日本の商業音楽界を支えるトップ・ストリングスアレンジャーの一人。2019年にバッハの無伴奏チェロ組曲に挑戦した「たいようの谷」をリリース。

クレジット

『瀕死の白鳥』
ミハイル・フォーキン原型、酒井はな改訂
出演:酒井はな
チェロ:四家卯大
音楽:サン=サーンス「動物の謝肉祭」から「白鳥」
初演:1907年(マリインスキー劇場/サンクトペテルブルク、ロシア)もしくは1905年(貴族会館ホール)

 

『瀕死の白鳥 その死の真相』
演出・振付:岡田利規
出演:酒井はな
編曲・チェロ:四家卯大
音楽:サン=サーンス「動物の謝肉祭」から「白鳥」よりアレンジ
初演:2021年10月(愛知県芸術劇場)*「ダンスの系譜学」にて

 

「パフォーミングアーツ・セレクション2021」
プロデュース:唐津絵理(愛知県芸術劇場 / Dance Base Yokohama)
プロダクションマネージャー:世古口善徳(愛知県芸術劇場)
舞台監督:小黒亜衣子、峯健(愛知県芸術劇場)
照明デザイン:伊藤雅一(RYU)
照明オペレート:冨田章子(RYU)、相良萌
音響デザイン・オペレート:牛川紀政
音響オペレート:福島未久
音響アシスタント:青谷保之
制作:伊藤梢、金井美希

 

Dance Base Yokohama
マネージングディレクター:勝見博光
制作:田中希、宮田美也子、丹羽青人、神村結花

記録写真:羽鳥直志
記録映像:ディレクターズ・ユニブ
宣伝美術:柳沼博雅
会場:KAAT神奈川芸術劇場 <大スタジオ> 2021年12月11日

 

主催・企画制作:Dance Base Yokohama
共同製作:Dance Base Yokohama、愛知県芸術劇場
共催:YPAM2021 実行委員会、愛知県芸術劇場
文化庁「ARTS for the future!」補助対象事業

 

※本映像のバリアフリー版は公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】の事業で製作されました

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